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大阪高等裁判所 昭和31年(ラ)243号 決定

抗告人(申立人) 滝口万太郎

相手方(被申立人) 大阪市長

主文

本件抗告を棄却する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

本件抗告理由は別紙記載のとおりである。よつて、案ずるに強制執行停止命令の申請に対し却下の決定がなされた場合は右却下が申請の形式的要件の欠缺に基くような場合の外当事者及び当該裁判所は右決定にきそくせられ、申請人はその係争の権利関係若くは停止の必要性につきその後の事情変更があつたことを主張しこれを理由とするような特別の場合は格別同じ本案事件につき再度の執行停止命令の申請をすることは許されないものと解すべく、行政事件訴訟特例法第一〇条による執行停止命令申請の場合においてもその理を異にすべきでないと考える。

大阪地方裁判所昭和三一年(行)第五八号行政処分取消事件記録によると抗告人は相手方大阪市長が土地区劃整理法第七七条第二項に基き抗告人に対する昭和三一年七月一〇日付「土地区劃整理に伴う工作物の移築照会並に通知」と題する書面によりなした処分を違法としその取消を求める本案訴訟について、さきに同庁昭和三一年(行モ)第二号事件として相手方のなした前記書面による処分の執行停止命令申請をなしたのに対し、原裁判所はその申請理由を審査のうえ昭和三一年八月二日右申請却下の決定をし同月七日その正本の送達がなされたことが明かであるところ、本件再度の執行停止命令申請の理由は冒頭に述べたように右却下決定にていしよくしないその後の事情変更を主張しこれを理由としてなすものと認められない。尤も抗告人は相手方が右却下決定後同年八月一一日付を以て本件係争物件の除却をなす旨通知してきた云々と主張しているが、土地区劃整理法第七七条第六項によると同条第二項の通知に定められた期限の経過後は施行者は何時でも目的物件を移転又は除却することができるのであり(従つて「前記昭和三一年八月一一日付建物移転中の使用停止について」と題する疏第一号の通知は法の要求するものでなく、区劃整理施行者が手続を円滑に実施するために行う事実行為であつて、それ自体行政上の処分として取消の対象とならないものと解すべきである)抗告人のさきの申請も畢竟同法第七七条第二項の通知並に照会に定められた期限の経過により直接執行に移行すべきことを予想しこれにより償うべからざる損失を蒙るとしこれを阻止するために申立てられたものであるから、右の事項はさきの却下決定に包含せられ、既に判断がなされているものと解すべく、特段の事情がない限りこれを理由として再度の執行停止命令の申請をなし得ないものと云わねばならない。その他原決定が本件申請を排斥する理由として説示するところは洵に妥当であり、これを取消すべき違法の点がない。

よつて、本件抗告を棄却すべきものとし主文のとおり決定する。

(裁判官 田中正雄 松本昌三 網田覚一)

抗告の理由

一、本件は前に却下されたものと同一と云ふも、それは違ふ即ち相手方が出来ない移築を通告して、之れを中途変更して除却として、此除却を遂行否其申請に対する決定が正当に取扱はれずして、遂に除却を大部分したあととなり、更に片付けてなく未だ完了して居らないのに「後始末で執行者に於て当然平穏に秩序を維持すべきもので」云々と判示されて居る事は、木に魚を求めた、不当も甚しき決定と云はねばならない、何となれば申請に於て主張した通り、相手方は行政庁の名を利用する迄のもので、既にこんな問題を起して居る者に、平穏に秩序を維持すべき等とは、認識不足も甚しい、更に恰も本件相手方と大阪地方裁判所との間には此種停止命令は、出さない特約があるかの印象を受けて居り、亦前示の通り本件の根本である、土地区劃整理法第七十七条第三項の住居の用に供する以外、使途なき便所、門塀、納屋、就中便所は現に使用中のものを、使用して居らぬと云ふて居ると、虚構も甚しき大嘘を羅列して平然たる相手方、而も三ケ月の期間をおいてない事、更に同条第二項に依る通知は、移築である而も疏明第二号で明かな通り、移築の通告をしたから拒否すると答えてあるもので、除却しか出来ないから違法処分である、仍つて執行させてはならないから停止を求めた処が、嘘の理由を創造して却下された、それには裁判所として信頼するに由がないとして、忌避申立をした処が、今度は移築の通告をしたものを、除却の通告をしたと嘘を云ふて、八月十四日に除却すると全く格好だけ法に依るかの如く装ふて、法に違反して権利を侵害するので、停止命令を申請したけれども、矢張り真に其権利の防衛は出来ない結果となつて居る。

二、殊に相手方は、四億八千万円と云ふ食糧費と称して、自由に使用出来る交際費あり、更に最近二ケ年半も後に任期の全市会議員に、今の内から退職記念品料と名を付けて、一人当り金拾五万円を配分する、其任期迄に死んだり、失格したらどうするのか、何を苦んで市民の膏血を、渡す理事者は何を目論んで市会を懐柔するのか、実に其限度を知らざる伏魔殿、こんな者に肩を持つ者は軈ては連座、破滅を共にせねば済まない。

三、本件は行政事件訴訟特例法第二条の争ひで、同拾条の停止を拒否されたものであるから、同条第三項は適用はないものである。

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